http://www.atsumiyukihiro.net

Blog

“Japanese Guitar Song Book” (#00~11全12回連載)


00.「まえがき ~ Japanese Guitar Song Bookリリースに寄せて~」

 京都にて、石の上にも三年という諺が身に滲みる季節を迎えました。この度は、自主レーベルNIPPON NOTE RECORDSリリース第一弾、”Japanese Guitar Song Book” をやっと公に聴いて頂けること大変嬉しく思います。この作品は渥美幸裕が京都へ’新しい日本の音楽の姿’を求めた旅の集大成であり、そこから観えてきた新たな日本の音楽の型= 『邦楽2.0』 の入り口に立つ作品です。



 2011年の終わり頃、僕は東京の地で世界に輸出できる新たな日本の音楽の可能性について考えていました。

直感でNext World Satellite(現在HPにて4曲配信中)を制作したのですが、日本の風土の伝統から繋がる新たな日本の音楽が生まれるには、その文化が生まれるための生活が必要だと感じ、2012の春に京都は比叡山の麓、築130年以上は経つ日本家屋に制作拠点を構えました。

当時の生活と現代のズレ、そこからみえる新たな日本の暮らしの可能性は『邦楽2.0』の細部にも反映されることとなりました。蔵の中に竹と畳で拵えたスタジオブースの周りは静かで、ここで古典を聴いていると虫や風などの自然音と邦楽曲がこれほどまでに調和するのかと驚かされます。当時の楽曲制作環境には自然音がより豊かに流れ、その調和が必然であり自然であったと感じることができます。
また雅楽や箏、三味線等の様々な古典邦楽に触れ、それぞれの中にある興味深い仕組みを統合、応用し具体的に『邦楽2.0』へ組み込んでいきました。

 と、結果だけ書くとスムーズですが、この旅は決して簡単なものではありませんでした。
(それは『邦楽2.0』の入り口に立って更に、大きな可能性と未知の道へ、その果てしなさは続いております。。。)

世界中の音楽の中で日本の音楽と際立って感じられる特徴は何なのか?
風土に根ざした日本の文化、音楽と呼べる部分はどこにあるのか?
新しいとは何なのか?

性格が極端なのは自他ともに認めるところではありますが、
’オリジナル’のスタイルと ’新しい’ 表現をキーワードに
音楽を追求する莫迦真面目な人間性か

京都に移住したての『邦楽2.0』の ”ほ” の字さえも観えていなかった当初は
それまで好きだったジャズやロック、ブラックミュージックはじめ様々なジャンルの演奏が出来なくなってしまったほどです。

僕の中での’借り物’感が大事にしていたキーワードについに抵触してしまったのです。

ギターは弾きたいのに心から弾きたい音楽が見つからないジレンマには焦燥感を覚えました。
なんとも面倒な性格だと思いながらも、18歳の時ジャズにのめり込みそれまで愛聴していたロックを聴くことも演ることも封印した当時と何も変わらずであった自分に呆れつつ新たな日本の音楽を探る日々。

この数年はConguero Tres Hoofers の活動だけが唯一僕と外の音楽世界を繋ぐものと言っても過言ではないほど『邦楽2.0』探求に全てを捧げていました。

なにかしらヒントになると思えば、寺社仏閣、自然の中、古典邦楽者のもとへ足繁く通いました。日本のルーツといってもどこから切り取るかの問題もありました。

縄文まで掘り下げても音楽形式が残存していないので、現存する最古の音楽形式である雅楽まで溯り、そこから江戸期までに体系化された古典邦楽を経た1300年程の流れの中に今に繋がる仕組みを求めました。

雅楽だって唐の時代に大陸から輸入されたものというご指摘もあるかもしれません。全てはいつかの時代に海の向こうからやってきたのかもしれません。

しかし雅楽は1000年以上の時間をかけ日本独自の音楽形式を獲得しました。
西洋の仕組みを持つ音楽も1000年後には日本独自の音楽に完全に昇華されているかもしれません。

僕たちの時代の音楽に対する一般常識は明治に導入されたクラシック音楽教育をベースに作り上げられています。
その後のジャズやロックの導入もそのため浸透しやすかったのだと思います。もちろん単純にカッコいい音楽だし、もれなく僕自身も相当にのめり込み、古典邦楽はむしろダサイとさえ思ってきました。

 ダサイと思っていた和の世界が宝の山に観える日が来るなんて。
話は遡りますが、 2011年の夏はヨーロッパに活動の新天地を求め下見の旅に出ていました。
暮らしと音楽活動がしやすい街を探して様々な場所を訪れました。
僕にとって’オリジナル’だと思っていた感覚にヨーロッパはまだその奥があることを痛快に教えてくれました。
ジャズの進化系のような音楽に自分のオリジナルを見出そうとしていた当時の自分は’日本人’であるという当たり前すぎたことが異国の地では最大のオリジナリティであったことに改めて気づき、同時に日本のことを何も知らない自分にショックを受けました。

そんな僕を一気にぶっ飛ばしてくれる出逢いがオランダのゴッホ美術館にありました。——— ’浮世絵’です。ゴッホの収集した広重らの絵にジャポニズムを見出した彼の感覚のように、僕が初めて知る和の美しさ、繊細さ、猛々しさがありました。こんなに刺激的な芸術文化を日本独自に生み出しているこの熱量と感覚が反映された音楽。そこに自分の求めるオリジナルがあるのだと強く感じました。

 このビジョンを礎に『邦楽2.0』は練り上げられました。この産声をあげた一つの型が今後どう進化を遂げジャズやロック等様々な音楽スタイルの様に磨き上がっていくのか一緒に見守って頂ければ幸いです。

 そして今回発表される”Japanese Guitar Song Book” は、この『邦楽2.0』の型を使いソロギターのアルバムとして制作されました。Blues GuitarやBossa Nova Guitar等のようにその風土に根ざして生まれたギタースタイルを日本の文化として産み世界にシェアしていきたいという想いを込めて ”Japanese Guitar” と名付けました。今年の元旦から極寒の蔵の中、11曲の録音を始めました。冬の音はこころなしか澄んでいてこの時期の録音は好きなんです。とはいえ京都の冬は芯にくる寒さです。慣れた寒さと言えど音と引き換える体温。中々納得いかずに14時間も籠って録音する日もありました。そんな熱量と冴えた空気感も味わって頂けると思います。

 ジャケットデザインは伊勢型紙のデザインにも精通する切り絵アーティストの古城里紗さんに、まさに邦楽の”間”のうねりを捉えた作品を描いて頂きました。音源配信に先駆けて、マスミ東京さんにて行われた彼女の個展で”Japanese Guitar” を披露させて頂きました。アルバムには奈良、江戸、明治、昭和時代のカバー曲を収録しているのですが、思いのほか奈良、江戸の曲に興味を持って下さる方が多く驚きました。ここから実際の古典邦楽へも興味を持って下さる方が増えたら嬉しく思います。ミュージックビデオはConguero Tres Hoofers時代からの盟友であるGAZOUの児玉隆さんに撮影して頂きました。僕の音を視覚的に最大限引き出してくれるカメラマンです。撮影場所は武田信玄公の菩提寺である乾徳山恵林寺にご協力頂きました。四月は信玄祭りの早朝、門前の桜の絨毯の上で、三味線の仕組みを応用して作曲した ”纏う” を隆さんの眼が持つ黒光りした質感が静かに美しく日本の美に溶け込ませてくれます。また、この制作に当たり様々な方々に多大なるご協力を頂きました。この場を借りて感謝申し上げます。

まえがきが一番長文の可能性がありますが、11曲分のブログ連載をスタートしたいと思います。

”Japanese Guitar Song Book” と共に邦楽の時間旅行を楽しんで頂けたら幸いです。

渥美幸裕



現状、作品は音源配信のみとなっております。
CDのインサートには全曲の楽曲解説(日本語/英語)が封入してあります。また古城理紗さんの、『邦楽2.0』グルーブを捉えた挿絵が描かれております。説明を読んで頂くよりもむしろ分かり易いかも?

 お付き合い下さりありがとうございました。








OFFER CONTACT : info@doublefive.net

Conguero Tres Hoofers : http://www.cth-japan.com