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“Japanese Guitar Song Book” (11回連載)
Blog 「セルフライナーノーツ」


03.「六段の調 初段変奏|Rokudan Shodan Variation ~ Japanese Guitarとの出逢い ~

 20代前半、スタジオミュージシャンとして、またセッションギタリストとして音楽性や内容に関わらずギターを弾き音楽で仕事ができる喜びに浸る毎日でした。ポップス、ジャズ、ヒップホップ、ブラックミュージック、クラブミュージック、レゲエ、ブラジリアン、Jクラシックなどなど、演歌以外のジャンルには大体飛び込んできました。そこでの研鑽が今に活きており大変感謝する次第でございます。ただ、どこの現場にも骨を埋めたい場所が見つからず、段々と自分にとっての真なるオリジナリティを模索する様になりました。

最大のきっかけは”origami PRODUCTIONS” の立ち上げと”thirdiq”のリリースでしょう。
セッションミュージシャンの現場では、自分が発揮したいことが出来ないことが増えてきていました。今思えば自分のわがままを無理に通そうとしていた了見の狭さもあったと思います(当時の皆様すいません、、、)。が、当時としては自らがいいと思った音楽、演奏アイデアを素直に表現したいという欲求が強くなっていた時期なのでしょう。
それが”thirdiq””Conguero Tres Hoofers””Next World Satellite”を経て、行き着いた”Japanese Guitar” というコンセプトであります。

自分にとっての新しさオリジナルを求めて出逢った”Japanese Guitar”は様々な音楽と出逢えたからこそ、またそこから一度離れたからこそ観えてきたコンセプトであります。
それぞれのジャンルが持つ型をはみ出すにも塩梅があると思います。
例えばジャズは即時的な変化の豊かさに醍醐味があったりしますよね。一方、レゲエは超シンプルなパターンをひたすら繰り返すなかに気持ちよさがあります。
このようにそのスタイルの良いところが一方と逆の価値観を持ち合わせていたりする。
レゲエに無理矢理ジャズの変化感を持ち込もうとすると全然氣持ちよくなかったりするんですよね。そのジャンルならではのカッコいいとこ、氣持ちよいツボは外さない。これが型の基本なのでしょう。それぞれのジャンルが持つスタイルならではの醍醐味が”Japanese Guitar”によって身体で分かる様になり、より一層全ての音楽に感動できるようになりました。

 ”Japanese Guitar”は海外の音楽に憧れてきたからこそ生まれたものでもあります。
その憧れのベクトルは音楽スタイル自体のカッコ良さから次第にそのジャンルが生まれる出自へと変化していくのです。そのような、風土に根ざした歴史感や文化観、民族性、身体性が反映された音楽を日本ならではのスタイルとして創ってみたいと思う様になりました。愛憎の果てに真実の愛を知るかの様に、憧れと嫌悪の果てに”Japanese Guitar”は目の前に現れ、僕の音楽性を統合してくれました。

 そろそろ「六段の調 初段変奏|Rokudan Shodan Variation」の解説へといきますね。
この”Japanese Guitar Song Book”には過去1300年に溯り、奈良、江戸、明治、昭和時代のカバー曲が収録されています。この六段の調は江戸時代の箏曲家八橋検校氏によって作曲されました。段ものと呼ばれ、初段の旋律が六つの組曲として発展する形式で創られております。初段の旋律自体が希有な発想で創られていると感心するばかりですが、それが六段階ギアを上げて発展していくそのスピード感と、展開の広がり方には脱帽です。僕はその初段の部分を”Japanese Guitar”のためにアレンジしました。

 先ずは曲を知ることから始まります。何百回聴いたことでしょうか。正直旋律のツボが分かるまでは氣が狂いそうになりました。聴き始めは、なぜ八橋さんがこの旋律で確信を得たのか分からなくなるほど複雑なメロディに聴こえるんですよね。が、八橋マジックに次第に虜になってしまいます。僕のDNAにジワジワと働きかけ、まるで眠っていた日本人遺伝子が目覚めたかのようにこの旋律の機微に郷愁を覚えるのです。すると実はシンプルに波の様に旋律が折り重なり躍動する様が観えて参りました。なんと美しく高度な世界観なのでしょう。この素晴らしさを現代にアクティベートするべくアレンジに取り組みました。

 箏もギターも弦楽器。ですが、楽器構造も音域も発音の響きも別物です。ギターで箏のような奥行きある発音を表現できることが六段六段に聴かせるために最も重要なことと思われました。旋律の歌い回しも箏ならではの音の伸びと揺らぎを反映させることが必要でした。

 取り組む中で、一つ面白い発見がありました。この歌い回し、結果完成までには苦心した部分でありますが、取り組みの入り口としては、なぜか箏のニュアンスで結構簡単に弾けるんですね。
実は、僕の父は昭和期から平成にかけての箏曲家沢井忠夫氏に師事し箏の演奏をしていました。幼少期にはよく家で箏の音を聴いて育ったのが功を奏したのか、そのニュアンスが自然と自分に備わっていたことに今更驚かされました。当時は洋楽に憧れてか、なぜ我が家は邦楽が流れている家なのか不満を持っていた記憶があります。まさかここにきて、この経験が最大の持ち札になろうとは。人生とは不思議なものだと感じます。因みに六段への取り組みは父から提案されたものです。箏を知る父の選曲眼に、このアレンジができた今、頭が下がります。

 箏の持つ歌い方をギターに応用し、且つそこに、その旋律から聴こえてくる躍動感を聴く方にギターでも伝えたく、新たな和音を加えることにしました。この和音の付け方は僕が原曲から感じる高揚感と奥行きとスピード感を自分なりに音に具現化したものです。六段の演奏の中でもとりわけ明治期から昭和にかけての箏曲家宮城道雄氏の演奏に感銘を受けるのですが、是非この機会に本来の六段の調にも触れてみて頂きたいと思います。
 箏による六段の演奏が持つ間の具合をギターで最大限活かすため、最終的に変奏曲形式でアレンジしました。先ずは初段のアレンジのみですが、いずれ全ての段をアレンジし、六段の調 ~Japanese Guitarのための~” を完成させてみたいです。

 先日縁あって、八橋検校さん所縁の法然院にて”Japanese Guitar”による初段変奏を披露させて頂きました。その所縁を知ったのは演奏後だったので驚きました。素晴らしい先人に恵まれました。八橋さんありがとうございます。

 次回は4曲目、「日出ずるしい ~Japanese Guitar のための練習曲より~Hizurushii (the Sun's dazzling)」について書きたいと思います。また”Japanese Guitar”という型のいろはについて探ってみたいと思います。

 
 CDのインサートには全曲の楽曲解説(日本語/英語)が封入してあります。また古城理紗さんの、『邦楽2.0』グルーブを捉えた挿絵が描かれております。説明を読んで頂くよりもむしろ分かり易いかも? 是非下記へアクセスしてみてください。

 お付き合い下さりありがとうございました。


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Conguero Tres Hoofers : http://www.cth-japan.com