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“Japanese Guitar Song Book” (11回連載)
Blog 「セルフライナーノーツ」


04.「日出ずるしい ~ Japanese Guitar のための練習曲より~|Hizurushii (the Sun's dazzling)」

連載も第4話目となりやっと文章のリズムが馴染んできました。とはいえあくまで主観的なこと。長く、読みづらい部分もあるかもしれません。ここまでお付き合いくださりありがとうございます。この先もぜひよろしくお願いします。

昨今、日本のアイデンティというキーワードについて目にする機会も増えましたが、これは簡単に言えば、日本の良いところを見直して自信を持って世界に’今日本ってこんな感じに生活文化を営んでいるよ’ と伝えたい気持ちの表れとも取れるような氣もしております。
日本酒業界や、西陣織などの伝統分野では、その見直しも早く、ポジティヴに
日本文化を世界へアクティベートする活動が見受けられます。

この”Japanese Guitar” というコンセプトも正にそのような活動を音楽で行おうという想いの表れでございます。日本の風土がもつ歴史感、文化観、民族的身体性という元素が人の手と感性を通し、時に日本酒になり、時に織物になり、同様に音楽となるのです。これからのグローバル社会に必要となるのはローカル文化の個性だと感じております。世界の方々と楽しく平和に繋がるにはお互いの個性を出し合って認め合うことが大切だと思います。その一歩を踏み出し始めているという実感が、アイデンティの見直しから感じられて目の前の混沌を超え、わくわくさせてくれます。

では日本の個性を凝縮した音楽とは如何なるものか。先述の伝統分野の業界では世界と繋がるために、自らの個性に対してシビアな眼を持っているように感じています。自らを律し、最上の質を発揮する。ギターでも日本の個性をもって世界と繋がるには、それ以上の眼が必要になると試行錯誤を繰り返す毎日でございます。

言うなれば、「”Japanese Guitar”を通して世界と楽しく文化交流」計画を進めるためにも、この”Japanese Guitar”とは何ぞやという、自らの個性にメスを入れ、その’いろは’を少し探ってみたいと思います。

Blog第1話目で型の話に触れましたが、型とは遊びのルールであり、仕組みであり、また、’それ’を’それ’たらしめるもの、であると解釈しています。その型を構成する要素が所作として確立し、その所作を通して型を認識し、その型を活かし、自らの’生’と’空’を表現する。これが’道’と名が付く世界に通底する原理なのかもしれません。

では音楽の型とはどのような要素で構成されているのでしょう。因みに音楽の型というのはジャンル(スタイル)という言葉に置き換えても良いかもしれません。グルーヴ(ノリ)、リズム、メロディ(旋律)、ハーモニー(和音)、ニュアンス(歌い方)。おそらく基本はこの5つくらいの要素で構成されると考えられます。それらが、風土に根ざした歴史感や文化観、民族性、身体性のフィルターによってそれぞれに特徴付けられ、世界中に多彩なジャンルを生み出しました。ジャズをジャズたらしめるにも、ボサノヴァをボサノヴァたらしめるにも、先の5大要素にその誕生背景に潜む、風土(國)、人種(民族的身体性)、時代背景がフィルタリングされています。
言い換えれば、ある時代、ある土地で育まれた、そこならではの音楽ジャンルの発想は、その当時のそこに通底する社會の発想、技術革新と密接に関わり、その國柄、時代を音楽形式でも同様に物語っている、と捉えることができそうです。まあ人間の創りし物ですからそういう事なのでしょう。

”Japanese Guitar”はこのような型の出自を逆手にとって新たに考案した”邦楽2.0”という型をギターで表現した音楽ということができます。その礎となる日本の風土に現存する古典それぞれの仕組みは、古典と一括りにできないほど多岐に渡っています。雅楽と箏曲、三味線等はそれぞれにユニークでシンプルな仕組みを持っています(勿論共通する部分もあるように感じられますが)。それぞれの古典からそのユニークなルールを合体させ、さらに現代の音楽感覚を結び未来へ繋げること。これは日本社會が向かう自然文化と都市生活の新たな融合を目指す未来に、その接点となる音楽を創る音楽家の務めであるとも感じています。今これからの日本社會を僕も生きているのだなぁと型から思わされる次第でございます。

型の質感こそ音源を聴いて感じて頂くのが全てですが、邦楽の独特さはやはり’間’が生み出すグルーブの在り方に顕著に観ることができると思います。先日、トランぺッターの”近藤等則”さんと日本の音楽観について話題になった時に、「日本の音楽は’呼吸’の表現だ」と仰っていました。正に”間”は呼吸の表現の一つの体現だと感じています。この”間”の揺らぎはとても感覚的であるのですが、その塩梅に対してはDNAレベルで日本人に備わっているものだと感じています。都市の生活リズムで忘れかけた感覚が自然の中で目覚めるように、邦楽は自然風土が持つ身体的リズムに耳を傾ける機会をくれます。

ちなみにこの揺らぎの幅は、ジャズのリズム型に当てはめようとすれば、はみ出してしまいました。ジャズもグルーブの幅が大きめな音楽に位置づけられると思いますが、それよりも大きい幅に驚かされました。今僕自身が一番注目しているのは雅楽の”間”のグルーブ感ですが、三味線民謡のグルーブ感はまた別の面白さがあります。

『邦楽2.0』には様々な日本グルーブ感の統合が観られます。
そこに和に通底する旋律感に基づいたメロディが歌を詠みます。時代の流れにより西洋的メロディ感と気持ちよく融合するポイントを探り出しました。和のメロディの強力な個性は下手をすれば野暮になってしまいます。和の旋律感が自然と匂う曲として、でも現代的な音楽的美意識にも適う曲として聴こえるように旋律選びを心がけました。

和声感もそこに和を匂わすために一音一音組み合わせを試しました。笙(雅楽の和音楽器)が持つハーモニー感もとても美しく、その美しさの理由を音に見出し、ギターで同様の感覚を味わえる音を積んでいきました。コードのクラスター感とオープン感の中に和を感じる塩梅があるんですよね。これも血の感覚かもしれません。
歌い方の特徴としては水墨画に観られるような、にじみ、かすれ、ぼかし、という表現が邦楽にも合うような氣がします。尺八の古典には水墨画の一筆に込められた命と同じような感覚を覚えます。また鹿威しのような、水の重みに耐えかね音が鳴るまでの、または弓道で言う、弓の弦張が頂点を極め、’それ’が弓を放つような、そんな曲線と発音のスピード感が邦楽を体現するのではないでしょうか。

曲によっては西洋大陸的リズムや旋律、ハーモニーがセクションとして出てきますが、その対比がより邦楽的特徴を活かし、さらに両者が自然と統合し21世紀の表現へ向かっていきます。”Japanese Guitar”もまだベータ版です。3年後にはどんなアップデートしていることでしょうか。

では、「日出ずるしい|Hizurushii (the Sun's dazzling)」の楽曲解説に参りたいと思います。この”日出ずるしい”という言葉は静岡県西部の古い方言で、現在70代後半より上の方はまだ使ってらっしゃる方もいますがほぼ使われなくなった響きです。’眩しい’ことを意味します。僕の祖母にとっては太陽の光が眩しいとき「日出ずるしいやぁ」と心で響く方が自然なことのようです。その趣きある表現が気に入り曲にしたものです。

1小節毎に’間’の生じる6小節の主題と展開部から成ります。旋律感は現代寄りで、ほんの少しだけ和を匂わす塩梅が好きな曲です。眩しさのイメージから短い曲になりました。楽曲の時間というものは不思議で、その体感時間は相対的です。楽しい時間はあっという間。一方退屈な時間は長く感じるみたいに。人間は本質的には絶対時間で生きていない生き物です。この時間感覚をぶっ飛ばす音楽の効果にとても可能性を感じています。

余談ですが、この感覚を逆手に利用して音楽セッションをするイベント”TIMER JAM”をNJQ (Nippon Jazz Quartet)主催で始めました。新たな音楽の遊び場として、ミュージシャンにとっても、リスナーにとっても音楽の感じ方や、その場で音楽(曲)が生まれる体感を共有できるイベントになると思います。あらかじめ設定された時間内で即興にて曲を創る。終わりの時間が観えている分、曲の起承転結をどう扱うかがポイントになります。一見大変かと思いきや、終わりが観えている分、既存の終わり方を目指さなくてもいい利点もあり、ユニークなセッションが生まれやすいことも分かりました。定期的に開催してこちらもアップデートしていい遊び場に育てていきたいと思います。

話を戻しますと、副題に「 ~Japanese Guitarのための練習曲~」 と付いています。これは練習曲と称して描き貯めている1分間ほどの小作品集からの一曲でもあります。この”Japanese Guitar Song Book”はぜひ譜面のカタチでも出版したいと考えています。それによって例えば、アメリカの片田舎で”Japanese Guitar”に邁進する少年が誕生することを楽しみにしています。

次回は5曲目、「水龍の一滴|A Drop of Water Dragon」の解説です。これは水をテーマに表現した曲です。水に因み、邦楽と自然との関わりについて触れてみたいと思います。


 
 CDのインサートには全曲の楽曲解説(日本語/英語)が封入してあります。また古城理紗さんの、『邦楽2.0』グルーブを捉えた挿絵が描かれております。説明を読んで頂くよりもむしろ分かり易いかも? 是非下記へアクセスしてみてください。

 お付き合い下さりありがとうございました。


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